暮らしの中に見える、明日の動きを探そう

情報プロデュースによる商品企画

商品を企画開発する上で大切な事は、消費者の知らない事をいち早く知らせ、情報を整理する為の考え方や視点の提示を的確に行う事です。この事が企業および商品の信用になり、人々を動かすのです。
つまり、過去の実績や現在の市場調査資料だけでは新鮮な商品が作れないと言う事です。人々の暮らしの中に見える、明日の動きを示唆しているヒントを探す事が何より重要です。

その1 「衣・食・住」のリンク

「衣・食・住」のリンク

同じ道徳観や価値観を持っていて、同じ情報が提供され、広い可処分所得の幅を持った市場と言うのがわが国の市場の特徴です。 つまり、同じ物差しで同じ情報を判断し、欲しい物は何でも買う事が許されるので、皆が同じ物を欲しくなると言う訳です。
まして団塊世代市場はマニュアル大好きと言うより無くては生きて行けませんからこの傾向を典型的に備えています。
更に、このロジックで物を購入する時はストーリーに反応する訳ですから、同じ物と言うより言ってみれば,同じコンセプトを買う事になります。それなら当たった商品のコンセプトを真似てストーリーを作れば当たると言う事になり、それなりのやり方が見えてきます。唯注意が必要なのは、ヒット商品のコンセプトは意外とそのメーカーには判っていないので、企画者自身が取材し考え出す必要があると言う事です。
日本の市場は、何故か「衣」「食」「住」の順に情報がリンクする傾向を持っています。アパレル市場のヒット商品のコンセプトは次のシーズン食品市場でヒットし、次の年インテリア市場で支持されます。例えば平成元年「アルマーニ」のヒットは翌年「ティラミス」のヒットに、そして翌年の「イタリアンファブリック」に続きました。平成3年「ポロの紺ブレザー」のヒットは翌年「焼きおにぎり」のヒットに、そして翌年の「和紙のインテリア」のヒットへと続きました。平成12年の大ヒット「ユニクロ」は13年の「デパ地下」のヒットに、そして14年の「グルメテーマパーク」へと続くのです。
つまり、食品の企画をするなら重要な情報は昨年のアパレル市場にあり、一昨年のインテリア市場の動き方にあるのです。

その2 「目線位置」の変化

その2 「目線位置」の変化

スーパーマーケットの販売手法について勉強したメーカー営業マンは、店頭で目線位置の高さの棚を自社製品のために確保する事に命を懸けています。これは目線の行く場所,つまり床上150cmが最も販売効率がよいという考えからですが、果たしてそうでしょうか。
日本人は欧米人に比べ、首が肩線より上に乗っているという骨格の構造と、大きな物やイメージを小さく縮小化して認識する独特の視覚文化から、視線を上下に使って情報を収集し判断する傾向を持っています。つまりこれを利用すれば、売り場を効率良く確保して利用したり、どの位置に置いても売れるパッケージを作ったり、さらには操作性のすぐれた電気製品なども作れます。

その3 「語彙」のファイル -「感性」との関わり-

その3 「語彙」のファイル -「感性」との関わり-

企画の仕事の中で「ある言葉をイメージすると必然的にあるイメージが付与してくる」という事は実に重要な意味を持っています。つまり市場のニーズを知り、動きを判断するために、お客様とコミュニケーションをとるにはお客様の使っている言葉と使い方を知らなければなりません。それが判ればお客様の目がどこの何に向いているのか、何をどんな風に考えているのかが判るからです。言い換えれば言葉を調べる事は市場にアンテナを張り巡らせる事と同じなのです。
そこで、例えば食品の企画を担当している人には、台所にある物1000個の単語帳作りを薦めています。一言で片手鍋と言っても、ミルクパン、ソースパン、行平鍋などいろいろな種類と使い方がありますし、包丁も、菜切り包丁、出刃包丁、柳刃、牛刀からペティナイフまで何十もの種類があります。調理用品の名前を知り、さらに調理方法と料理を知ればその先にあるライフスタイルや食べ物、食べると言うことに関する価値感までが見えて来るようになるからです。
言葉を共有していなければ同じ事を考える事は出来ないのですから誰にでも通用する膨大な語彙を持っている事、集める力を持っている事は、より大きな市場を獲得することが出来る商品を企画する上で基本になる大切な事です。

その4 「イメージ」の選択と「切り口」の多様化

その4 「イメージ」の選択と「切り口」の多様化

思い出すシーンの多い映画ほど息が長くヒットすると言われていますが、商品も同じで落としこめる生活シーンが多ければ多い程、結果として広い市場を獲得しヒットします。
家の中で缶珈琲を飲むシーン2000件とか、ラーメンを食べるシーン1000件などを思い出してみましょう。すると、何故その人がそこでそれを飲むのか食べるのかの切っ掛けが見えるようになり、それこそがヒット商品のコンセプトでありカギなのです。
この作業とトレーニングが頭を柔らかくし、ライフスタイルに根差した企画力を強めます。その上で各シーンの共通項を整理すると、正しい大きな市場が見えてきます。